戦争/レジスタンス関連でのオススメ映画13選

戦争と映画。両者は互いに密接な関係をもって存在し続けてきた。
例えば、戦時において映画はプロパガンダの手法として用いられたり、戦争で開発された技術がそのまま映画技術の高度化に貢献するなどしてお互いを補完しあった。その一方で、戦争が終われば映画は「戦争」の恐ろしさや残虐さを伝え、二度とこのようなことが起こらないための象徴的な手段、記憶/記録の装置としてむしろ戦争を否定するものとして活用始めてもいる。

もちろん、戦争映画が戦争という現実をありのまま伝えきれているとは言い難く、製作者の意図によって変換されたり、誤った歴史認識を植えつける可能性や戦争を美化した演出や自国のナショナリズムを過剰に高めるような演出から新たな火種を生みかねないという危険性も未だに潜んでいるのだが。

ここではそんな、今なお様々な議論を呼び起こす「戦争」映画をご紹介。
戦争を題材として映像化する危うさを意識しながらも、その恐ろしさを伝え繰り返さないという思いを込めてゆっくりと考えながら見て欲しい作品ばかりを集めました。
ちなみに、戦争映画と表象の不可能性については記憶/物語 (思考のフロンティア)などがオススメ。
現代の「紛争」や「テロ」を扱ったものはまた後日。

 

 

プライベート・ライアン ★★★★★ 4.6/5.0

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 <内容紹介(amazonより)>アメリカ軍兵士の目をとおして語られるこの物語は、第2次世界大戦の歴史的D-デイ侵攻作戦から始まり、上陸後は兵士たちの危険極まりない特別な任務へと続く。ジョン・ミラー大尉(トム・ハンクス)は、ジェームズ・ライアン二等兵を探し出すため、部下とともに敵陣深く浸入する。4人兄弟のライアン二等兵は、ほかの3人の兄弟をすべて戦闘で亡くしたのである。作戦遂行が不可能に思えたとき、兵士たちは命令そのものに疑問を持つ。たった1人の兵士を救うために、なぜ8人もの兵士が命をかけなければならないのか。彼らは戦場の過酷な現実に取り巻かれ、それぞれ自分なりの答えを出す。そして名誉と誠実さと勇気をもって、不確かな未来に打ち勝つ強さを見つけるのである。

戦争映画の中でも不屈の名作といえる本作。
故に様々な解釈もあるが、戦場を描いた映画としては個人的に一押しの作品。戦場の恐怖と戦争の残虐さが映像のリアリティとともに体感できる。戦場の恐ろしさを知るために見るべき映画を聞かれれば、間違いなくこの作品をおすすめする。
予告編(字幕なし):http://youtu.be/hM2LqfmTKj4

ここには載せていないものの、戦争映画の名作としてよく挙げられるものなども。

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ブラックホーク・ダウン ★★★★☆ 4.4/5.0

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<内容紹介>1993年10月3日。東アフリカに位置するソマリアの首都モガディシオに、100名の米国特殊部隊の兵士たちが舞い降りた。彼らの任務は独裁者アイディード将軍の副官2名を捕らえること。当初、作戦は1時間足らずで終了するはずだった・・・。しかし、2機の最新鋭ブラックホーク・ヘリが撃墜されたことから、兵士たちの運命は一変する。仲間の救出にあたる彼らは、想像を絶する地獄絵図の真っ只中に取り残されることになる・・・。

ソマリア内戦に派遣されたアメリカ兵逹の物語。
中盤以降のほとんどのシーンが銃撃戦で占められており、「群衆」と「武器」の持つ恐ろしさをリアルに実感できる。撮影方法が上手いのか、まるで自分が映画の中に入り込んでいるかのようで何度も鳥肌が立った。
訓練されてない人々であっても、現代の武器を持てば簡単に多くの人を殺せる。そして、それが束になれば…本当にあの群衆は鬼気迫るものがあった。
あんな状況に人間が耐えられるはずがなく、戦争によるPTSDの問題などもこの映画を見れば納得できるかもしれない。
武器密売の撲滅がなければ平和など訪れないと思わせてくれると同時に、その難しさも表している映画。

予告編:http://youtu.be/gOfqGDpAt1E

 

 

君のためなら千回でも ★★★☆ 3.8/5.0

君のためなら千回でも [DVD]

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 <内容紹介> まだ平和だった1970年代アフガニスタン。少年時代のアミールとハッサンは兄弟のように育ち強い絆で結ばれていた。だがある衝撃的な事件が起き、アミールはハッサンを裏切ってしまう。
時を同じくしてソ連軍がアフガン侵攻を決行、2人は歴史の流れに引き裂かれ再び会うこともなかった…。
20年の歳月が流れたが、アメリカで平穏に暮らすアミールの心には決して抜けない棘のように後悔の念が残っていた。アミールは意を決し、今やタリバン政権下となった戦禍の故郷へ危険な旅に出る。過去の過ちを正すことに遅すぎるということはないのだから…。

戦争映画というよりも、それに翻弄された二人の男の物語。
本当に複雑で切ない映画で、世界の不条理さと人間の温かさを同時に見せつけられた気分になる。 正直、手放しに感動もできないし、主人公の行為 が美化されすぎている気もする。 ただ、それでも何か心に響いてくるものがある作品になっている。 ソ連進行からタリバン台頭によるアフガニスタン の変貌ぶりも上手く描かれており、社会派映画と しての完成度も高い。
ラストの「君のためなら千回でも!!」という言葉も含め、マーク・フォースター監督の作り方はやっぱり上手いなーと改めて思い知らされる。
同じような時代背景として、一般的な評価はものすごく悪いが個人的には印象に残ったチャーリー・ウィルソンズ・ウォー [DVD]もおすすめしたい。
戦争という現象に徹底的に翻弄さ得れ続けた人々の物語であるならアンダーグラウンド 2枚組 [DVD]もまた衝撃的だった

 

 

戦場でワルツを ★★★★ 3.9/5

戦場でワルツを 完全版 [DVD]

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<内容紹介>冬のとある夜、旧友に呼び出された映画監督のアリは夜毎悩まされる悪夢のことを打ち明けられた。そこでアリは、自分たちが従軍した1982年当時の記憶がないことに気付く。ふいに直面した謎に興味をそそられ、失われた記憶と自分自身の真実を見つけるため、アリは世界中に散らばる戦友たちを訪れ取材しようと決意する。

元兵士の監督が自身の経験をもとに制作した自伝的なドキュメンタリー・アニメーション。
アニメーションでの表現ということで、戦争映画の中でも非常に独特な世界観をかもし出していてその手法が本当に見事にマッチしている。戦争の後遺症、「記憶」というキーワードを元に、戦争の本質に迫ろうとした実に幻想的な映画。何気に題名のセンスも素晴らしい。

予告編:http://youtu.be/jek5Wo7nNPo

 

 

・誰がため ★★★★4.0/5.0

誰がため [DVD]

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<内容紹介> ナチス占領下のデンマークで様々な思惑に翻弄さ れながらも戦い抜いたレジスタンスの二人を描いた実話。

映画としての作りが上手いのか、独特の雰囲気で最初から引き込まれた。
「誰がため」という題名がまさにふさわしく、主人公たちは一体何のために、誰のために戦い続けたのだろうかと問いかけたくなる内容。 むしろ、戦争とはそういうものなのかと感じずに はおれない。
「敵を殺せば社会が変わると思っているのか? 」 という問いかけは、血で血をあらう戦争そのものの愚かさを示している気がする。
自分の国で敵の軍隊が列をなして行進している様を見て吐き気をもよおす主人公、同時にレジスタンスになる決意をする姿が印象的で、 侵略されるというのはああいう状況をいうのだろう。
個人的には二人がレジスタンスになるキッカケや過程がもっと見たかったが、ナチスの侵略の裏にはこうしたレジスタンスの存在があったことも忘れてはいけない。

 

 

ナチスが最も恐れた男 ★★★☆ 3.3/5.0

ナチスが最も恐れた男 [DVD]

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 <内容紹介>1940年、青年マックス・マヌスは、反ナチスの思いから、志願してフィンランドでロシアとの戦いに参加した後、ナチ占領下のノルウェーに帰郷する。彼は仲間と共にドイツ占領下で巻き起こっていたレジスタンス<抵抗運動>に加わるも捕まってしまう。しかしすぐに脱出、スコットランドに逃げそこで破壊工作員としての訓練を受ける。第二次大戦下、反ナチスレジスタンスと実在した破壊工作人を描いた実録戦争アクション巨編。

題名のわりに淡々と進んでいく感じの実話。 北欧のレジスタンス活動やマックス・マヌスという実在の人物は新鮮だった。 出来事よりも共に戦った仲間との絆や友情に重点がおかれており、周りの人間が消されていく中での主人公の孤独感や悲しみがリアル。
ただ、題名のような派手な映画を求めている人にはオススメできない。
チラシによるプロパガンダか、爆破による建物の破壊かという最初の分岐点が印象的だった。
映画としてものすごく面白いわけではないが、なぜか心に残ってしまう映画。

同じようにナチスとの徹底抗戦を描いたもの。

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シンドラーのリスト ★★★★★ 4.8/5.0

 <内容紹介>1939年。ドイツ人実業家、オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)が、ポーランドの古都クラクフにやってくる。野心家でナチス党員の彼は、巧みな話術と賄賂を使ってドイツ軍の上層部に取り入り、たちまち軍需工場で成功を収める。彼が雇っていたのは、有能なユダヤ人会計士、イザック・シュターン(ベン・キングスレー)のほか、賃金の安いユダヤ人労働者だった。やがて、ユダヤ人への迫害がエスカレートし、彼らが強制収容所で恐ろしい残虐行為の犠牲となっていくのを目の当たりにしたシンドラーは、ユダヤ人を助けようと、収容所所長、アーモン・ゲート(レイフ・ファインズ)に渡すためのあるリストを作り始める…。

ナチスユダヤ人迫害を描いた衝撃的な名作映画。
何よりこの主人公の心情の変化が実に見事に描かれており、ラストの彼の言葉の一つ一つが観ている者の心へ響いてくる。
「もっと助けられたはずだ」という彼の後悔と多くの犠牲者を、私たちは絶対に忘れてはならないんだと。
ホロコーストを描いた映画の中で、この歴史的事実を多くの人に知ってもらうためにも切実に見て欲しい作品の一つ。ちなみに、よくシンドラーと並べて語られる終戦60年ドラマスペシャル 日本のシンドラー杉原千畝物語・六千人の命のビザ [DVD]というDVDも本当にオススメです。

予告編:http://youtu.be/puV5x4Z_DDU

 

 

黄色い星の子供たち ★★★★ 3.8/5.0

黄色い星の子供たち [DVD]

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 <内容紹介>ナチス占領下のパリで暮らすユダヤ人は、胸に黄色い星を付けることが義務付けられる。いろいろと嫌な思いをしつつもジョーと家族は、ささやかな幸せが続くことを信じていたが─。1942年に行われた史上最大のユダヤ人一斉検挙“ヴェル・ディヴ事件”を描いたドラマ。50年もの間封印されていた真実が、今明らかに!

フランス国内でも行われていたホロコーストの実態を子どもの視点から扱った映画。
ホロコーストに関する映画はたくさん見たが、この映画はフランスが舞台であるためか、子どもたちを写したものであるためか、今まで見たものとはまた違った重さを感じた。
そして、フランス自らが裏の歴史を暴き出したという点にも価値がある。
予告編:http://youtu.be/5LYqtODC8dg

同じように、ナチス占領下のフランスを描いたものとして。

サラの鍵 [DVD]

さよなら子供たち [DVD]

フランスではないが子どもの視点から描かれたものとして。

縞模様のパジャマの少年 [DVD]

 

 

 

・ニュールンベルグ軍事裁判 ヒトラー第三帝国最後の審判 ★★★★ 4.2/5.0

ニュールンベルグ軍事裁判-ヒトラー第三帝国最後の審判- (2枚組) [DVD]

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 <内容紹介>第二次世界大戦直後、ヒトラーが自害し、何百万もの人々を殺害したナチスのナンバー2だったゲーリングがドイツ駐留の米軍キャンプに自ら 出頭してくる。彼は戦犯として最重要の人物だった。トゥルーマン大統領は戦勝国の立場から戦犯を弾劾するのではなく、公明正大に裁判を受 けさせることを欲していた。しかし相手と同じ土俵に立った場合、相手を打ち破ることが至上命令の戦争という極限状況において、たとえ何万人 殺そうとも軍人を殺人罪に問うのは難しい。何故ならそれが軍人の存在理由だからであり、彼らが殺人罪に問われるならば、勝った連合軍の 軍人も同罪であるはずだからである。そのためナチス戦犯は、たとえ何百万人もの人間を殺していようとも、無罪の判決が下る可能性を秘めて いた。連合国側は、どのような戦略で裁判に挑むかを熟考し、ゲーリングを含め第三帝国から職務の異なった様々な被告を集めてナチスを代 表する戦犯とし、裁判に挑む。そして1945年11月、世界中が注目する中、歴史的な裁判が始まった。 戦争における倫理とは?忠誠、誇り、真の正義、公平性とは?そして真に憎むべきものとは?

ニュルンベルグ裁判はホロコーストの残虐な行為への十分かつ正当な措置が取れたとは言い難いというのが現代の一般的な見解であるものの、ホロコーストを含むナチスドイツが行った戦争犯罪や略奪品を公式に記録し後世に残す働きをしたことは大きな成果であった。
そして、この映画はその裁判を実にドラマティックに描いた裁判ドラマである。
人が人を裁くという行為への疑問、これだけ人知を超えた犯罪に対する裁判が故に、裁判というシステムに大きな疑問とその本質を考えさせられる映画でもある。
裁判映画だけに演出はかなりオーバーなのだけれど、そのメッセージを伝えることを主題にするならばあの演技は素晴らしかったと思う。

 

 

・その他ナチス関係として以下のものなども。

ショア [DVD]

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