支援を行う際の注意点
支援を行う際に、最も注意すべき点は「善意は善行を保証しない」という点である。
支援の多くは善意に基づいて行われるが、その善意が善行を生み出すとは限らない。佐藤(2005)は、年寄り扱いされて傷つく老人、善意で文房具を与えた結果としてそれをお金に変えて麻薬に変えてしまう少年、一生懸命な姿に感動して法外なチップを与えた結果として外国人の靴しか磨かなくなった靴磨きの少年などの例をあげながら、開発援助に関わる際の注意点として以下のものを上げる。
1.相手の事情を無視した善意は、相手を困惑させる 2.相手の自己認識と、こちらの認識のズレは相手を侮辱する 3.相手の価値観を無視した支援は相手の生存戦略を歪める 4.安易な施しは人を堕落させる |
善意が善行を生み出すとは限らない。この原則は、そのまま「支援現象」全般にも適用できる。支援の現場においては想い・感情・考え・価値観など多くの「行き違い」が生じる。
例えば、看護やカウンセリング、犯罪被害者支援などの分野においては、トラウマや心の病に苦しむ人を助けたいという想いはなかなか症状が回復しない患者や被害者への重荷やプレッシャーとなることがある。症状の回復とはその人個人のものであり、支援者の強い想いが逆に新たな苦しみを生むことがあるのである。
これはまた、支援者の専門性が被支援者の認識や価値観、考えを否定する結果に繋がるという主張にもつながる。水津(2008)は、死別による喪失体験を生きる人々にとって、回復段階論という安易な処方箋が一種の暴力性を持っていることを主張する。理論とは一般性を追求するものであり、それは回復過程へ向かう被支援者の多様なあり方を蝕んでいるかもしれないのだ。
支援者が持つ知識が必ずしも全ての人々に適用できるとは限らない。支援者の想いは時に被支援者にとっての重荷やプレッシャーとなることがある。これらの点は、支援者が常に自覚しておかなければならない基本原則となる。
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