人はなぜ他者を助けようとするのか。

 人はなぜ見ず知らずの他者を助けようとするか。

人間とは自己利益を合理的に計算し、自己利益のみに従って利己的に行動する存在である。という経済学において想定されるモデルに反して、他者を「助ける」という行為は人間社会のいたるところに垣間見える。電車で席を譲るといった日常生活における「気遣い」とも呼べるレベルから、危険な紛争地への命懸けの支援まで様々場面で。

以下利他行動の背景メモ。

 

・「利他行動」の背景には次のものがある。

1.個人的規範・社会的規範

人間やその社会には、道徳や倫理などによって「困っている人を見たら助けましょう」といった規範が内包している。その結果、このような規範に従った決定は行われやすくなる。

 

2.同一化・共感

人は誰かが困っている状況を目にすると、自分がそのような状態に陥ったらどのように感じるかを想像し、同様の苦痛(共感的苦痛)を感じるようになる。それは他者への同情的苦痛生み出し、他人への利他的動機が促進されるのである。つまり、人間が持つ共感能力や道徳・倫理などの社会的規範が人間の利他行動の基盤、「誰かを助けよう」とする行動を促すと言える。

 

・人間・社会にこのような規範や能力が存在する理由

他者に対して利他的に振舞うという行動傾向は、利他的に振舞うことが結果的に行為者自身に利益をもたらすために備わった適応の産物である。つまり、利他行動そのものが合理性を持ち、人を助けるということが巡り巡って自分の利益になるという点から、利他行動は文化を超えて普遍的に人間の基本能力や社会制度として埋め込まれている。誰かを助けようとする行為は、最終的に個人・社会的な利益に繋がることから、すべての文化圏で伝播・遺伝されてきた人類の基本機能の一つと言えるのである。

 

利他行動を支えるしくみ―「情けは人のためならず」はいかにして成り立つか

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個人と社会の相克―社会的ジレンマ・アプローチの可能性 (MINERVA社会学叢書)

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