『ジェミニマン』:限られた劇場でしか鑑賞出来ない別次元の映像体験(日本での上映は三館のみ)


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ウィル・スミス演じる伝説的暗殺者ヘンリーは、政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃される。自分の動きを全て把握し、神出鬼没で絶対に殺せないと評される最強のターゲットをヘンリーが追い詰めたとき、襲撃者の正体が秘密裏に作られた“若い自分自身”のクローンだという衝撃の事実を知り、政府を巻き込む巨大な陰謀に巻き込まれていく。

 

ドルビーシネマ3D+ in HFR(120fps)にて鑑賞。
まだ一部の劇場でしか鑑賞できない異次元の映像体験。話の内容よりも映画自体がSF世界に近いという奇妙な作品。この映画は劇場のスペックによって見れる映像が全く異なる。物語ではなく映像の新しさを見るものなのに、あまり周知されてないのが悲しい。

4K/3D/120fpsに対応出来る映画館に溢れた世界で、全ての人がその環境で鑑賞出来れば評価も興収も少しは変わったはずなのに。もしかしてアン・リー監督は未来に生きてるんだろうかと心配してしまう。赤字だろうと最先端の映像技術を追求して、未来を垣間見せてやろうという執念はやっぱり凄いよ。
これが次世代の標準映画になるかは疑問だし、どう繋がっていくのかは未知数だけど、劇場で120fpsを体感してみる価値は十分にある。

この話はもともと20年以上前のダーレン・レムケの脚本が発端で、トニー・スコットを始め様々な監督や俳優が挑戦して断念してきた企画。前に本で読んだ幻の映画の実現を喜んでたから、革新的な映像の邪魔にならない話に収められたのはかなり残念だった。
90年代のSFアクションと最先端の映像とのミスマッチも感じる。元がないのにリメイク感。もし90年代に公開されてたら、どんな工夫で補った映画になってたのかなという思いが強まってしまった。映像が凄すぎてノスタルジックにもなる。
共同脚本として元のとは違うらしいので、日本では未公開だけどレンタル屋で偶然見つけてしまった位の規模で見たかったな。一流の製作陣によって悪目立ちしてしまったのは少し悲しい。

しかし宣伝として映像部分を全面に推されてないのは違和感を感じる。公式サイトで120fpsでみれる劇場も書いてないし、始まるまで60fpsが限界なんだと思ってた。SNSがなかったら気づけなかった。監督の意図を伝えるのも大切だと思うんだけどな。
この映画に関しては、ドルビーシネマ側がウチで見ないと意味ないですよ!くらい言っても良いくらいに格差があるわけで、他の劇場も押し黙ってるのは謎すぎる。執拗に日本初!を押してる宣伝文句も全然きかない。
アバター』が当時の3D映像と切り離して語れないように、この映画も同じタイプの映画。映画館にきてもらう為に作ったと言いながら、フルスペックで見れるのは世界でも中国だけという矛盾は感じるけど、広報の援護射撃が欲しかった。宣伝ないとこんなに盛り上がらないものなんだなと怖くなる。